『相ひ思ふ華』に登場した日下部家・14代目当主龍馬と15代目当主伽羅のカップリング。カップル、と
いっても母を同じくする兄妹です。この兄妹の時代は、丁度髪狩が始まって朱点童子が不穏なことを言い
出した頃でして、角を持って来訪した伽羅を見た二人の母親である13代目当主朱鷺は、精神に異常をきた
してしまいました。
鬼の子だといって危害を加えようとする母親から妹を守ってきたのが兄の龍馬で、伽羅は龍馬のことを
恋い慕うようになりました。ですが、晩年になって昼子と交神したことで神々の意図を悟った龍馬は、昼
子と同じ瞳を持つ息子・蘇芳を昼子の傀儡と思い込んで折檻するようになってしまいます。その龍馬を支
えたのは、伽羅でした。
龍馬は氏神となって魂が消滅することになろうとも一族を守る、と誓って死に、遺された伽羅は幼い頃
から恋慕って来た兄を交神相手に望みました。質問は、交神の間での二人に対して行われているというシ
チュエーションです。恥ずかしいくらいラブラブなので苦手な方はご注意下さい(笑)。
本来100の質問ですが、ここでも50問までを使わせていただいてます。
龍:無量大日下部…人だったころは日下部龍馬と言った。
伽:15代目の日下部紫苑…兄様から当主を任される前は伽羅と申しました。
龍:死んだのは1歳5ヶ月の頃…だったかな。
伽:1歳3ヶ月になります。
龍:…男、だが…わざわざ聞かないといけないようなことか?
伽:女です。
龍:騒がしい性分ではないな。一人で抱え込むところがあると思う。
伽:自分で自分の性格についてお話する、というのも難しいですね(照笑)。今は当主の身なので、一族の皆のこ
とを常に気にかけるようにしていると思います。
龍:優しいな。それでいて、俺などよりはよほど本質を見ている。
伽:そんな…(赤面)。兄様もお優しいです。当主としての責務も完璧にこなしていらっしゃいましたし、戦場で
は誰よりも頼りになりました。兄様がいらっしゃらなければ…今の私はありません。
龍:…優しくなどない(顔を背ける)。俺が蘇芳に何をしたか、知っているだろう?
伽:知っています。でも、兄様が何故そうなさったかも分かっているから…兄様があの子になさったことは許され
ることではないけれど、だからと言って兄様を嫌いになったり、軽蔑したりなんてことは絶対にありません。
だから…今こうして、兄様を交神相手に、と望んでいるんです。…兄様こそ、私のことを軽蔑なさいませんか。
実の兄を、交神相手に望む妹など…。
龍:…莫迦なことを言うな。軽蔑など、するわけないだろう。
伽:……はい(頬を染める)。
龍:イツ花が…鎮守ノ福郎太様から伽羅を預かってきた時に、家で。
伽:はい。
龍:可愛いな、と思った。俺が育った時分は男所帯で…女人といえば母上とイツ花だけだったからな。俺より年下
の女の子、というのがまず不思議だった。
伽:私の頭の角のことは…どう思われました?
龍:それは…確かに最初は驚いた。今までそういうことはなかったからな。でも、イツ花がきちんと親神様のもと
から預かってきたのだから、鬼の子であるはずがないとも思ったよ。実際、お前を見ていれば鬼の子になど到
底見えなかった。
伽:そ…そうですか?(頬を染める)私は…実は最初、兄様が私の兄様だと言われてもぴんと来なかったんですよ
(照笑)。あの時は、うちの中では肌の色が浅黒いのは兄様だけだったでしょう。それに、天の父様がとても色
白な方だったので、そういう肌の色の方がいるのだ、ということが驚きでした。天には浅黒い肌の方もいらっ
しゃったかもしれませんけれど、私は引っ込み思案だったので父様の横にずっとくっついていましたから
(笑)。勿論、兄様には日下部の家に来た時からとても可愛がっていただきましたから、すぐ兄様にはなついて
しまいましたけれど。
龍:そういえば、初めは戸惑ったような顔をしていた(笑)。家で浅黒いのは俺だけだったからな。
龍:さっきも言った。優しいし、俺などよりよほど本質を見ている。自慢の妹だ。
伽:そ…そうでしょうか(頬を染める)。私も同じです。兄様はとても優しい…私を絶対に守る、と仰ったとおり、
ずっと私のことを守ってくださいました。
龍:そうかな(苦笑)。晩年はむしろお前に助けられてばかりだった。不甲斐ないと思っている。
龍:嫌いなどと思うようなことはない。
伽:私は…何でもお一人で背負いこまれて、悩んでいらっしゃるところ。そうして、ご自分のことを至らなかった、
と悪く仰る。そういうところが…嫌です。いいえ、嫌、ではなく…悲しかったです。幼い頃兄様に守られてば
かりだった分、少しでも兄様の力になりたい、と思って過ごしてきましたから…。
龍:…済まなかった。昼子と交神してからは、お前に要らぬ心配をかけて泣かせてしまったな。
伽:でも、亡くなる前には私にも昼子様との交神で何があったか…教えて下さいましたね。お一人で悩まれてさぞ
お辛かったでしょう、もっと頼ってくださってよかったのに…。
龍:そうだな…もっと早くお前にだけでも打ち明けていれば、蘇芳のことを虐げることも…なかっただろうにな。
今更悔やんでも仕方のないことなんだが…。…え?蘇芳というのは誰だ、だと?
伽:あ、ええと…それは、あまり詳しく申し上げるようなお話では――
龍:いい。事実だからな。蘇芳は…俺が太照天昼子と交神したことで生まれた子供だ。蘇芳が昼子と同じ瞳の色を
していたがゆえに…俺は蘇芳のことを、昼子の傀儡だと思ってしまった。昼子がイツ花を分神として日下部に
送り込んだように、蘇芳も似たような存在だと思ってしまったんだ。あいつの瞳を通して昼子が見ているのだ、
いつか俺たちは朱点の言うとおり消されるのではないのか、と…。だから実の息子だというのに…酷く虐げて
しまった。勿論それは誤解だったんだが…知ったのは、氏神となって天に昇った後だった(苦笑)。
龍:いいと思っている。
伽:はい。先ほども申し上げましたけれど、兄様はいつも私のことを守って下さいました。
龍:別に、今のままでいいと思っている。
伽:私も…今のままで不満はありません。
龍:難しい質問だな(苦笑)。俺は武辺一辺倒だから、こういう類の問いはどうも苦手だ。そうだな…鶴などどう
だろう。飛ぶ姿が美しいから、舞う時のお前に似ていると思う。
伽:……苦手だなんて、嘘を仰らないで下さい(頬を染める)。
龍:いや、本当に苦手なんだが…(苦笑)。
伽:動物、と言うと語弊がありますが、兄様はお名前のとおり龍だと思います。猛々しいけれど、とてもお優しい。
龍:…そんな立派なものではないぞ、俺は。
伽:また、そのようなことを仰って(ちょっと膨れる)。
14 相手にプレゼントをあげるとしたら何をあげる?
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龍:舞扇を。花が描かれているものなどが似合うのではないか。
伽:そうですね…兄様は筆まめな方なので。硯や筆などを一揃い、とか…文箱は、蒔絵や螺鈿が入った美しいもの
がいいですね。
龍:特にない。俺はお前が健勝で笑っていてくれれば、それでいい。
伽:私も…特にありません。兄様に子を授けていただきますから。それだけで十分です(笑顔)。
龍:……そうか(赤面)。
龍:それもない。自慢の妹だ、と言っただろう。
伽:問いの9でも申しました。兄様は何でもお一人で背負い込んで、ご自分のことを悪く仰る。先ほどからもその
ようなことばっかり(ちょっと膨れる)。
龍:一人で背負い込むのは性分だが、悪く言っているつもりはない…本当のことだからな。
伽:でも、私はそのことを含めて兄様をお慕い申し上げているのですよ?兄様ご自身がそのように仰っていては、
私はどうしたらいいのですか(じっと見つめる)。
龍:…参ったな(苦笑/目をそらす)。
龍:いや…特には。
伽:当主の指輪に触れる癖があるようです…指に何かをつける、ということ自体に慣れていないので。兄様や歴代
の当主様がたの思いがこもった大切なものだとはわかっているのですけれど、何だか気になってしまって…
(笑)。
龍:大きさが変わるものではないからな。お前は指が細いから、抜けてしまったりはしないか?男の薬指で大体丁
度いい大きさだからな。
伽:いいえ、私の場合根元よりも間接の方が太いので…。関節で引っかかるので抜けはしないんですよ。でも、根
元でくるくる回ってしまうんです(笑)。
龍:伽羅は、気負うと扇の先端が少し下がる(笑)。大将を狙う時、合わせで術を使う時…そのような時に。
伽:そ、そうでしょうか(赤面)。兄様は…ええと、申し上げてもいいのかしら…?
龍:…癖などあったか?
伽:私に何か隠しごとがあったり…都合の悪いことがあったりすると目をそらしていらっしゃいました。そらす、
と言うほど大きい所作ではないんですけれど、目を伏せてそっと視線を外す…と言った方が近いでしょうか。
龍:本当か?…参ったな、よく見ている(苦笑)。
19 相手のすること(癖など)でされて嫌なことは?
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龍:ない。
伽:お一人で背負い込まれたり、ご自分のことを悪く仰るのは…もうやめてくださいね?(じー)
龍:……努力する(苦笑)。
20 貴方のすること(癖など)で相手が怒ることは何?
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龍:伽羅が俺に怒ったことは、ほとんどなかったように思う。…むしろ今この場でやり込められている気がする
(苦笑)。
伽:兄様が抱えていらっしゃったことを…私も知ることができましたから。今ならば、イツ花も席を外してくれて
いるから、はばかるものは何もありませんもの(笑)。そういえば…兄様も、私にお怒りになったことはほと
んどありませんでしたね。
龍:俺が怒るようなことを、お前がしなかったからだ。
伽:子供の頃の私が…額の角を切り落とそうとした時にも、兄様はお怒りにならなかった。
龍:……俺が傍にいてやれば、お前だってそんなことをしようなどとは思わなかっただろう。防げたはずのことだ
ったから、俺はずっと悔いていた。
伽:あの時、兄様が酷く悲しそうにお笑いになったことが…今でも忘れられません。叱られるのかと思っていたか
ら。他に痛むところはないか、と優しく、でも本当に悲しそうに微笑まれたことが、私は逆にとても辛かった
です。ああ、こんなにも兄様に心配をかけてしまったんだ、って…。
龍:今も言ったが、防げるはずのことだったから本当に悲しかったんだ…叱った方が、よかったか?
伽:…いいえ(泣き笑いのような顔)。
龍:…下世話な質問だな(苦笑)。日下部はそもそも、そういう類の質問に答えられるような体ではない。交神も
…儀式を行うだけのものだ。
伽:そう…ですね(寂しそうに笑う)。
龍:伽羅が1ヶ月の時、手を引いて祭りを見に行った。
伽:ええ、そうでした。あ、勿論額の角は隠して行きましたよ。筋骨逞しい殿方が肌をさらしていて、驚きました
(笑)。豊穣を祝う祭りだ、とだけしか聞いていなかったので。
龍:俺も見るのは初めてだった。イツ花から祭りの内容を聞く限り、正直女童に見せていいものだろうかとは思っ
たんだが(苦笑)。でも、気晴らしになればと思ったんだ。
伽:驚きはしましたけれど、すべてが新鮮で楽しかったですよ。
龍:伽羅は目を皿のようにしていたな(笑)。
伽:だって…日下部も武人の家柄ですけれど、あそこまで体のあちこちがぼこぼこに盛り上がっている人なんてい
なかったでしょう?本当に人なのかしら、って(笑)。何だか作り物みたいでした。
龍:あれは男の俺から見ても、作り物めいた体だと思った(苦笑)。
龍:問いの21で答えたろう。日下部はそういう類の質問に答えられるような体ではない、と。そもそも、1ヶ月の
妹を連れて祭りを見に行っただけだ。
伽:でも…私はそれだけでも、とても嬉しかったんですよ。
龍:伽羅が家に来たばかりのころは、よく鴨川のほとりを二人で歩いた。夕日が川面にきらきら輝くのを見るのが
好きだったろう。
伽:気を使って下さっていたのでしょう?母様と私が、顔を合わせないように…。
龍:いや…ただ、外の景色を見せてやりたかっただけだ(目をそらす)。
伽:(ほら、こういう時に目をそらしていらっしゃるのですよ…)
龍:ううん…。こういう風習があるらしいということはとりあえず置いておいて、俺は気が利いた演出であるとか、
そういう類のことにはとんと疎いからな。問いの14にあげたような、贈り物を贈るくらいしか思いつかない。
伽:私も、凝った演出はあまり思いつきませんから…贈り物に、寿ぎの歌をそえて差し上げるくらいかしら?
龍:お前は歌を詠むのが上手かったな。俺はどうも、そういうことは苦手だった(苦笑)。
龍:特に…そのようなことはなかった。
伽:兄様が亡くなって、氏神になられて…私が交神相手に兄様を、と望みました。そうして今、この場があります。
龍:何があっても守っておきたい。いつも傍らで笑っていて欲しい…そういう存在だ。特に晩年の俺にとっては光
明のようだった。
伽:幼い頃から、いつも私の傍らにいて守ってくださった兄様のことを…今の今まで、心からお慕い申し上げてお
りました。…これは、問いの27に該当するのでしょうか?(頬を染める)
龍:……さあな(つられて照れる)。
龍:…ああ(目をそらす)。
伽:それは…妹として、ですか?
龍:お前は俺の妹なのだから、妹として愛しているのは当然だろう。…だが、お前が俺を交神相手に、と望んでく
れて…俺は本当に嬉しかった。…妹、としてしかお前のことを見ていないのならば、そうは…思わない。俺に
とっては…いつも傍にいてほしい…この世で最も大切な女だ、と言えば…いいだろうか?(赤面)
伽:はい(泣き笑い)。…嬉しいです。私も、勿論兄様のことを…殿方として、愛しています。
龍:……そうか(赤面)。
龍:兄様が蘇芳にしていることは、母様が私を遠ざけようとしていたことと同じです、と…そう言われた。あの時
は、お前に諫められても蘇芳のことを信じてやれなかった。
伽:でも、今はそうではないのでしょう…?兄様の気持ちが、あの子に届くといいのですけれど…。
龍:届けられるものならば届けたいものだが、俺はこの世の者ではないからな…(苦笑)。天界の者は、交神以外
に下界に干渉してはならないという決まりがあるから、あいつが討伐先で危ない目に会わないように…守って
やることも出来ない。死してからこのようにもどかしい思いをすることになるとは思わなかったな(苦笑)。
自業自得だから、この先何が起ころうとも全て受け入れるつもりだが…だからと言って、あいつにしたことが
帳消しになるわけでもないからな…。
伽:兄様から…そのお言葉が聞けただけでも嬉しいです。あの子は私が責任を持って育てております、ご安心くだ
さい(笑顔)。
龍:ああ…お前が、蘇芳の親代わりになってくれて本当に感謝している。
龍:……それを想像しろというのか、俺に(困惑)。
伽:日下部の家の者以外の人たちで、この角を見て言い寄ろうなんていう殿方はいらっしゃらないと思いますよ
(笑)。
龍:そういう問題ではなく、お前が浮気などというまねをするところが想像できないんだ(赤面)。伽羅はそんな
姑息なことはしない。
伽:まあ(赤面)。私は…どうかしら。もし兄様にそのようなそぶりがあったなら…どなたか気になるご婦人がい
らっしゃるのかしら、ってどきどきしてしまうかもしれませんよ(笑)。
龍:…随分信用ならないようだな(憮然)。
伽:私の思い違いだったらああよかった、やっぱりそんなことないわよねって安心すると思いますけれど(笑)。
信用するしないではなく、殿方のそういうそぶりに対しては、どきどきせずにはいられないと思います。…だ
から、兄様も紛らわしいことはならさないように、お気をつけてくださいね(いたずらっぽく笑う)。
龍:例えそぶりであっても、そんなことはしない(赤面)。
龍:そのような行為は軽蔑すべきものだと思っているし、自分がそうするつもりもない…誤解を招くようなことも、
勿論するつもりはない。…ああくそ、何故こうも妙な状況ばかり想定したたとえ話を持ち出してくるんだ(赤
面)。
伽:(くすくす笑う)たとえ話なのだから、肩の力を抜いてお答えくださればいいと思いますよ。私も勿論、する
つもりもありませんし、感心できる振る舞いではないと思っています。
龍:………(まだたとえ話を引っ張るのか)。←憮然
伽:(くすくす笑う)兄様は約束事をきちんと守られる方ですから…目的が何であれ、そこまで遅れるのはおかし
いな、と思うでしょうね。兄様が生きていらした頃は皆いっしょの館で暮らしていましたから…わざわざ待ち
合わせをいつにして、ということもそうそうないと思いますけれど。
龍:…好きだ、と答えれば十分だろう。わざわざこんなことまで言及するな(赤面)。
伽:でも…女子としては、愛する殿方が自分のどこがお好きなのか…お答えは気になりますよ(いたずらっぽく笑
う)。私は、手でした。それと背中。幼い頃からずっと私の手を引いて下さった、大きくてしっかりした手と
…背負って下さった広い背中が、一番印象に残っています。
龍:…お前からそう言われてしまうと、答えないわけにはいかないじゃないか(赤面)。ううん…俺も、手…だな。
それと…瞳、か。
伽:そうでしょうか?武門の生まれですから、都の姫様方のような白魚の手ではないと思いますけれど…(笑)。
先ほども申し上げましたが、根元よりも関節が太いですし。
龍:舞うには手の所作が自然美しくなるだろう。それを言っている。それに、お前は関節が太いことを気にしてい
るようだが、指が長く手の幅もさほど広くないから、無骨な印象も受けない…気にしなくていいと思う。瞳は
…元々お前は瞳が大きいから、目の力が強い印象がある。その瞳で、何かの意思を込めてじっと見られると…
どうも、押されてしまうんだ(苦笑)。
伽:そ、そうかしら…(照笑/当主の指輪をいじる)。
龍:俺の生前には、滅多にそういう表情はされなかったように思うんだが…問いの20でも言ったが、先ほどから押
されっぱなしなんだ(苦笑)。俺が下界で生きていた頃の伽羅は、どちらかと言えば俺から少し後ろのところ
に控えているような印象が強くてな。だから、余計にそう感じるのかもしれない(苦笑)。
伽:幼い頃から、兄様は私にとってとても大きな存在でしたから…少し後ろから離れて、兄様についていくことが
当たり前のような感じだったからかもしれませんね(笑)。
龍:思えば、俺が晩年に無様な振る舞いをしていた時くらいから、そういった印象がなくなった気がする。いつも
近くにお前がいる…そのように思っていた。
伽:だって…何とか兄様の力になりたい、と思っていましたから。
龍:今思えば…お前のことを、妹以上に認識し始めたのはそのあたりだろうな。
伽:まあ。では、最初からもっと兄様の近くにくっついていればよかった(いたずらっぽく笑う)。
龍:こいつ(苦笑)。
龍:…だからこんなことまで言及するな、と言いたいところなのだが…その顔は、「やはり気になる」ということ
か?(苦笑)
伽:はい…兄様はこういう機会がないとずっと教えてくださらなさそうですもの(照笑)。…とは言え、私自身は
殿方の色気といった類のことはよく分からなくて。戦場での兄様や家で当主として振舞われる兄様を見て、凛
々しい、とか素敵、と感じることはあっても…色気、となるとどうもぴんと来ません。どういう時のことを言
えばいいのかしら?(苦笑)
龍:さあな(苦笑)。参ったな…俺も、正直なところぴんと来ない。お前を色気だの何だのといった風に見たこと
がなかったからな。
伽:まあ。私には色気がないと仰るのですか?(いたずらっぽく笑う)
龍:そうは言っていない(苦笑)。なんと言うかその――生前の大半はお前のことを妹だと思っていたし、お前を
妹以上の存在だと思うようになった頃には、俺の心の余裕がなかったからな…言われて思い返してみれば、戦
装束のお前はそういう色気とかいう視点から見ても美しかったように思う。
伽:踊り屋の装束は肌を晒すものですから(笑)。
龍:お前は戦に出るときは髪を上げるだろう。その時に見えるうなじから背中にかけての部分が美しいな、と思っ
たことはあったな。男の体躯というのは鍛えればごつごつするだけだが、女はそうではないのだな、と。
伽:色気に関する質問なのに、何だか堅苦しい仰りようですね(笑)。
龍:思ったことを言ったまでだ(赤面)。この手の話題はもう勘弁してくれ、どのような言い方をしてよいのか分
からない(苦笑)。
龍:先ほども言ったが、お前の瞳で意思を込めてじっと見つめられる時だ。とても澄んだ青色をしている分、余計
に瞳の力の強さがあると思う。
伽:そ、そんなに凝視していますか…?(照笑)兄様は、昔から私を安心させようという時は…私の頬に手を触れ
て、目を見て…話して下さいましたよね。そんな時、私は頬から感じる兄様の手のぬくもりにどきどきしてい
たんですよ(笑)。
龍:そ――そうだったのか?俺は何気なくやっていたつもりだったんだが…(苦笑)。
伽:そんなに慌てないで下さい、嬉しかったんですから(笑)。
龍:嘘は得意ではないと思う…お前が昼子とイツ花の関係について聞いてきたとき、明らかにそれと分かる振る舞
いをしてしまったろう。それに、先ほど聞いて初めて知ったが、動揺したり隠し事をしていたりしても、お前
はお見通しのようだからな…(苦笑)。
伽:ずっとお一人の胸にしまいこまれていたことでしたし…まさか私からそのようなことを聞かれるとは思ってい
らっしゃらなかったんでしょう?兄様は大そうびっくりしていらっしゃいましたね(笑)。
龍:参ったな、当主が己の感情を見抜かれてしまうようでは(苦笑)。
伽:私が兄様に嘘をつく必要があまり感じられないので、なんとも言えませんが…多分、嘘をつくときはどきどき
してしまって、すぐわかってしまうでしょうね(笑)。
龍:下界で生きていた頃は…お前が嬉しそうに笑っていてくれれば、幸せだった。
伽:そ、そうですか?(照笑)。私は…兄様のお傍にいられればそれだけで幸せでした。氏神となられた今は…ど
うなのですか?
龍:(赤面)…今、こうしていることがその――幸せ、だ。
伽:…嬉しいです(頬を染める)。
龍:喧嘩、ではないな。先ほども言ったが、俺が全てを伽羅に打ち明けた時に…俺の蘇芳に対する仕打ちを諌めら
れた。今思い出すと本当に耳が痛い…(苦笑)。それ以外では特になかった。
伽:はい。問いの20でも申しましたが、兄様が私にお怒りになったことは、ほとんどなかったように思います。
龍:じっと見つめられて諌められた…返す言葉が見つからなかったな(苦笑)。
伽:元々喧嘩という類のものではありませんから(笑)。問いの41については省略させていただきますね。
龍:そうだな…。
伽:…気が進みませんか?
龍:いや…(赤面)。その――そういう間柄、でもいいのだが血の繋がりがない、というのもなんだか寂しいか…
と。…くそ、だからこういう質問をして何になるんだ(赤面)。
伽:(くすくす笑う)…確かに恋人と肉親は相反する間柄ですものね。私もどちらがいいか、と言われると…少し、
悩んでしまいます。兄様は私にとって大切な殿方ですけれど、来訪した時からずっと傍にいてくださった兄様
でもありますから…。どちらも、では駄目かしら?(笑)
龍:欲張りだな、伽羅は(笑)。
龍:俺が…晩年に無様な振る舞いをしても見放すことなく傍にいてくれた。そして、今こうして俺を交神の相手に
望んでいてくれている。これ以上のことはないと思っている。
伽:問いの5でも申しました…けして兄様のことを嫌いになったり、軽蔑したりすることはない、と。
44 「もしかして愛されていないんじゃ・・・」と感じるのはどんな時?
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龍:ない。
伽:……。ええと、ありません。
龍:…あ、あったか?
伽:ええと…そうではないんです…けれど(苦笑)。愛されているとかいないとかではなく、その――交神から戻
られた後の兄様のお振る舞いが、すっかり変わられてしまったので。昔の兄様と全く違う、一体どうなさった
んだろう、と…不安ではありました。
龍:…済まなかった(苦笑)。本当に、あの頃はお前に要らぬ心配ばかりかけてしまったな。
伽:問いの37の答えが出てしまったみたいですね…兄様に嘘はつけないみたいです(苦笑)。
龍:何度か言ったが、伽羅がいつも笑っていてくれればいい、守りたい…そう思っていた。だが――
伽:晩年には心配をかけてしまった。そういうのはもう…なしにしましょう?
龍:…分かった(苦笑)。
伽:私も何度か申しました。兄様のお力になりたい、兄様の負担が少しでも減ったらいい…そう思いながら過ごし
てきました。
龍:ああ。晩年の頃はもとより、実を言えば当主を継いだ時からずっと…お前の存在は心強いものだった。守って
やらなければ、と思いながら…昔からお前には随分と救われていたのだろうな。
伽:そう思っていただけるのなら…嬉しいです。でも、私がそういう私でいられたのは…兄様が、私のことをずっ
と守ってくださったからなのですよ?(笑顔)
龍:……そうだったかな(目をそらす)。
龍:曼珠沙華。お前を背負って庭に降りた時に見たのを覚えているか?お前も綺麗だと言って喜んでいただろう。
あれがとても印象に残っている。
伽:花がある時葉がなくて…葉がある時に花がない、と兄様が教えてくださいました。私によく似ているな、と思
いました…私が大人になった時には、兄様はもう…私の傍にはいらっしゃらなかったから。
龍:…苦労をかけたな。お前にばかり、重荷を背負わせてしまった。
伽:また、そんなことを仰って。重荷だなんて思ったことはありません(笑顔)。…そうですね、兄様は花、とい
うよりも…薄かしら?
龍:そうか?
伽:日にきらきらと透ける薄の穂が兄様の髪に似ているな、と思ったんです。曼珠沙華の頃に時期が重なっていた
から、特にそう思ったのかもしれませんね。
龍:ない。俺が胸のうちにしまっていたことは、全部伽羅に伝えた。
伽:私も、ありません。
龍:自分のことを悪く言うな、と言われたばかりだが…妄念に囚われて、実の息子に酷い仕打ちをしたことだ。償
って償い切れるものではない、な…そもそも、既に俺はこの世の存在ではないから償う手段すらない。
伽:蘇芳は私が責任をもって育てておりますからご安心下さい、と先ほども申し上げましたよ?(笑顔)
龍:ああ。それには勿論心から感謝している。あと…先ほども言ったが、俺が目を離したせいでお前の顔に傷をつ
けることになってしまった。これも、俺にとっては悔やんでも悔やみきれないことだ。
伽:あれは私が悪いんです、兄様が気になさることではありません。それを言ったら…私だって兄様のお顔に傷を
つけてしまったではありませんか。
龍:俺の傷の原因はお前じゃない、母上だ。お前のは、俺が傍にいてやれば防げるはずのことだったからな…角の
上だけで済んでよかった。だいぶ、目立たなくなってきているようだな(伽羅の傷痕に触れる)
伽:…はい(頬を染める)。兄様のお顔の傷は、ないのですね…生前のそういったものというのは、氏神になると
なくなってしまうものなのですか。
龍:ああ、額の印もない(額に触れる)。触れてみて何もない、というのも妙な感じがするな。
伽:ええ、呪いの印であるのに…生前の兄様のお姿に見慣れていたから、あるはずのものがない、と最初は違和感
を覚えました(笑)。
龍:どういう仲と認識されているかは置いておいて、交神を執り行うのだから公認なのだろうな。
伽:皆には、兄様が朱点童子を倒すためならば手段を選ぶな、と仰っていたこと、天界最高の男神は兄様だから、
兄様のお言葉に従うのだ…と伝えてあります。
龍:…それで、蘇芳は納得したのか?
伽:はい…あの子にだけは、兄様が何故実の子にそういう仕打ちをしてしまったか…そして、兄様がどうして天に
昇ったかを伝えました。私がそれを望むのなら、と…了承してくれました。でも結局、あの子には嘘をついて
しまいましたけれど…私が兄様と交神する理由は、それだけではないから…(頬を染めて目を伏せる)。
龍:……そう、か(つられて照れる)。
龍:(赤面)そうであれば…いいと思う。
伽:でも私には…兄様よりも優れた力はないと思います。ですから――
龍:お前が天界に来られないのなら、俺がお前のもとにいればいい。…別段、氏神になったからと言っていつも天
界にいなくてはならない、というわけではないからな。お前を守る、と約束しただろう。
伽:…はい(頬を染める)。
この質問は、
「BIANCA」様(管理人:南斗あきら様)からいただきました☆51問目から先もこちらにあります。