――助けてくれて、ありがとう。 俺屍さんに51ノ御題No.17『ありがとう』その2は、俺屍十周年祭『親馬鹿全員集合!』に投 稿した北辰家12代目当主文曲(もんこく/女子30番/土髪風目風肌/薙刀士)とその息子の巨門 (こもん/モヒ/火髪風目土肌/槍使い)@幼少時です。何故か『ありがとう』のお題が両方とも モヒによる動物ネタな件(笑)。 巨門は長じると巨漢のモヒになりますが、あれは初恋の人に相応しい漢になるべく己を磨き上げ た結果であって(笑)、来訪時は痩せていて小柄でした。しかし大変にやんちゃな子で、何かをや らかしては母親の文曲から拳骨を食らって母ちゃん勘弁(ジャイ○ン)と言わされているような感 じでした。 ある時、文曲が所用で参内するために家を留守にし、イツ花もちょっと目を離した隙に、巨門は 家の外には何があるんだろうという好奇心を抑えられず家を抜け出しました。 見るもの全てが物珍しくてきょろきょろしていると、何となく柄が悪そうな雰囲気のところに迷 い込んでしまいましたが、そこで仔犬を虐めている酔っ払いと遭遇しました。弱い者苛めが大嫌い なガキ大将気質の巨門は、目の前で行われていることを見過ごすことができませんでした。 大の男が弱い者苛めして恥ずかしくねえのか!と思わず啖呵を切ってしまったのですが、相手は 酔っ払いとはいえどうやら武士崩れ、既に武人としての訓練も受け始めていたとはいえ巨門にとっ てはやや分の悪い相手でした。しかし巨門はちょこまかと立ち回って仔犬を拾い上げ、物陰に隠れ たり塀によじ登ったりしてやり過ごし、見事救出に成功しました。 ところが、仔犬は腕の中でぐったりしていて、まだ癒しの術を覚えていない巨門はどうしていい やら分からず、半べそをかいてオロオロしながら家路を急ぎました。 丁度家では、巨門がいなくなって大慌てのイツ花と、戻ってきた文曲がやきもきしていたところ でした。文曲は巨門が見つかったらまず拳骨だなと思っていましたが、埃だらけになった息子が半 べそをかきながら戻ってき、その腕の中に仔犬がいるのを見て怒る気が失せてしまいました。 仔犬は文曲に癒しの術をかけてもらってすっかり元気になりましたが、さてこの仔犬をどうしよ う、という話になりました。どうやら捨て犬のようで、助けてくれたと認識したのか巨門にすっか りなついていました。この犬を飼いたいという息子に、文曲は ――犬は何年も生きるんだからね。言い出したからには、お前が最後まで面倒を見てあげなさい。 そう言って、犬を飼うことを敢えて許しました。 犬は雑種の雌で、穂垂(ほたれ)という名前をつけられました。北辰家は『天体もしくは天体に 関わるものの名前をつける』という縛りがあったので、ひょいっとやってきたということと、雑種 で尻尾だけがふさふさしてたので、彗星という意味のこんな名前になりました。 穂垂は巨門がどこに行くにも何をするにもくっついて歩き、巨門が初陣で出かけて行った時は心 配そうにずっと門の外を見送っていました。そのうち何となく帰ってくるタイミングが分かるよう になったのか、討伐に行った巨門の帰りを門でお出迎えするようになりました。 文曲は『巨門が最後まで面倒を見る=悲願を達成して犬の寿命を見届ける』という願いをこめて 犬を飼うことを許しましたが、残念ながら巨門は穂垂に見送られることになってしまいました。巨 門が死んだ日、穂垂は戸惑ったように家の中をあちこち探し回って、どこにもいないと分かると酷 く沈み込んで何も食べなくなり、巨門の娘の武曲やイツ花を大そう心配させたのですが、巨門が氏 神として天へ昇ると餌を食べるようになり、空を見上げていることが多くなりました。 元々、北辰家は一家系縛りというプレイスタイルのため、終盤に寿命が短くなってくると更に家 の中が寂しくなるな…と思い、画面外(笑)でも家族を増やしてやろうと思ってこのエピソードが できたのですが、丁度穂垂が北辰家にやってきて1年ほど経った頃、イツ花が「猫が子供を産んじ ゃって」というあの台詞を言ってきました。 巨門存命時にこの台詞が出てきたのも何かの縁…と思い、母猫が出産したものの育児放棄してど こかに行ってしまって、皆でわあどうしようとオロオロしていたところ、すっかり成犬になってい た穂垂がお乳をあげて養子(笑)にした、という追加のエピソードもできました。というわけで、 現在北辰家には一族の他に犬一匹と猫が二匹いることになっています。 穂垂にとっては巨門の娘の武曲も、さらにその子の禄存、廉貞も皆来訪時の小さい頃から知って いるので、全員自分の子供ぐらいの気持ちでいるはずです。今は、ある意味北辰家のお母さん的存 在になっています(笑)。 投稿した際、頂いたコメントから『巨門のモヒヘッドと穂垂のしっぽは似てる』という設定が 追加されました^^ マルチライナーの茶色で主線、コピック+色鉛筆+シグノの白で着彩。 |